増えた選択肢 4
(今までに無い不思議な感動を味わった)からの続き
中国から帰り翌朝事務所に出勤、朝礼が終わりパソコンに向かう、いつもは事務所内の私のデスクに座るが、今日は応接間兼社長室に入る、なるべくカポネと顔を合わしたくなかった、女の子たちは敏感である、私とカポネの微妙な雰囲気を感じ取ってしまう。それを悟られないために社長室に入った。入って直ぐにトンちゃんが入ってきた。中国出張中の事務所内の出来事と営業報告に来た。終わりごろに今度はカポネが入ってきた、その後ミキチャンと経理のママまで入ってきた。
カポネが青島の工場の素晴らしさを盛んに皆に説明しだした、「社員全員で青島工場に行くべきです、」全員が賛同して盛り上がった、経理のママが「慰安旅行なら会社の経費で落ちないが、工場研修なら全額経費で落ちます」
皆がいっせいに歓声をあげた、その声に驚いて事務所内の社員が何事かと全員入ってきた。トンちゃんから会社の経費で行く慰安旅行を説明した。後から入ってきた社員達が歓声をあげて拍手しした。
経理のママが『内の会社は9月決算です、研修旅行は9月に行きましょう、かなり利益が出ています、少しでも利益を削るために9月中に行きましょう』
トンちゃんが私の顔をみて、「社長決定してよろしいですか、」
「反対したら殺されそうだから、トンちゃんに任せます、私は会社で留守番をします」
「それは困ります、一緒に行ってください、用心棒がいないと不安です」
「大丈夫です、部屋は全てツインで二人で寝れば心配ない、寝る時ドアに応接のイスをおけば完璧です」
「でも社長が行かないと寂しいです、決してミルクをほしがったりしませんから一緒に行ってください」
全員が笑った、ふとカポチャンの顔を見た、カポチャンだけが笑っていなかった。いつもなら率先して笑うのに、明らかに出張後の微妙な女心の変化である。
ミキチャンが「私も葉巻をほしがったりしません、我々と一緒に行ってください。」
経理のママが「中華料理は歯に詰まる、爪楊枝があった方が安心です」
トンちゃんがあきれたように「どうしてこの会社はこうも品格がないのよ」
また全員が笑った、カポチャンだけが寂しそうな顔をした。
皆が部屋を出た後も社長室から一歩も出なかった、カポチャンは感情を隠せるタイプではなさそう、しかしチーフはまったく動じなかった、おかげでみんなにばれることは無かった、しかしカポネは出張前と出張後では雰囲気も顔の表情の明らかに違う。
カポネがアメリカに行くまでにまだ一ヶ月ほどある、それまで察知されないように注意しなければ。
私が先にアメリカ本社に行ってカポネを迎え入れよう、そのほうが会社内の接触を少しでも短く出来る。カポネとの関係が分かったときは会社が崩壊する日である。絶対に避けねばならない。
いつもなら会社に遅くまで残ってるが今日は3時ごろに会社を出た,直帰をトンちゃんに告げて早々と姿を消した。カポネの目がドアを出るまで追いかけてきた。
会社を出ても行くところがない、家に帰っても仕方がない駅の近くの喫茶店に入る、コーヒを目の前にして途方にくれる。たった二泊の中国出張で自分の心がカポネに傾斜していくのが分かる、いまさらチーフと分かれるなど人間として出来ない、そんなことをすればチーフが自殺するかも知れない、自分も廃人になってしまう。
カポネに対する気持ちを断ち切るためにチーフのマンションに行ってみよう、今までは行く時はほとんど金曜日の夜、それも必ず電話してから行く、チーフには来週の金曜日に行くことになっている。私はまだ中国にいるとチーフは思っている。チーフにマンションの鍵はもらっているが使ったことはない。
行っても留守なら勝手に入って待っていよう、鍵ももらっているし結婚も決まっている女性の部屋ならかってに入ってもかまわない、チーフは前に勝手にいつでも来て待っていてくださいと言っていた。よし行ってみよう、どうせ行くと所もない。
喫茶店を出てタクシーを拾った、今からなら4時過ぎに着く、早く会ってカポネに傾きつつある思いを断ち切らなければ。タクシーの中で何故か心臓の鼓動が早くなった、会いたくない、引き返したい、近くまで来てタクシーの運転手が場所を聞いた、「ここで結構です」といってタクシーを降りた。マンションまで歩きながらもしタクシーが来たら手を上げて家に帰ろう、こんな気持ちで会うべきでない、もっと心が落ち着いてから会おう、しかしマンションの前についてしまった、ドアの前で呼び鈴をならす、留守のようだ、合鍵でドアをあける、心臓が早鐘のようにドキドキした。
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