増えた選択肢 5
(心臓が早鐘のようにドキドキした)からの続き
ドアを開けるとかすかにタバコの匂いがした、チーフはタバコを吸わないはずだ、キッチンのテーブルに座る、吸殻の入った灰皿が置かれていた。お父さんが北海道から来たみたいだ、リビングの長いすに男物のカバンが置かれていた。カバンのネーム入れを何気なしに見る、チーフと同じ苗字が書かれていた、少し疑って悪かった、ベランダに男物のパンツと下着が干してある。
お父さんだから当たり前である、このまま来たことを分からずに部屋を出よう、お父さんと顔を合わすのは少しテレがある、いずれ北海道に挨拶に行かなければ、そのときでいい,
今日は会わないほうが良い、立ち上がってベッドを見た、枕が二つ並んでいる、娘がいくら大きくなっても子供である、父親と一緒に寝ても不思議でない。
ベッドのおいてある部屋に来てみた、いつもの彼女の匂いがしなかった、タバコの臭いがした、一晩泊まったくらいでここまでタバコの臭いは染み付かない、お父さんは何日も泊まったみたいだ。
早く部屋を出ないとチーフたちとぶつかればお父さんに人間性を疑られてしまう、早く出なければ、そのとき また長いすのカバンが目に入った。ファスナーが開いたままになっている。カバンを触らずに大きく開いている中を見た。
本が見えたその上に黒い手帳のようなものが目に入った、小型録音機である、そのまま通りすぎるつもりが、聞いてみたい衝動に駆られた。なんと大胆なことを、その録音機を少しだけ巻き戻して再生してみた、いつもの気の弱い私なら絶対にそんなことはしないのに、ドキドキしながら再生ボタンを押してみた、突然女性のセックス時の声が聞えてきた、その声は聞き覚えのある声だ、チーフだ!、
いつもの甲高いクラリネットのチーフの声だ、間違いない、心臓が早鐘のように撃ち始めた、なぜだ、考えがまとまらないうちにテープを切って急いでマンションを出た。
心臓の動悸が治まらない、自宅の近くの駅前の喫茶店に入った。落ち着くまで家に帰れない。いろいろ考えるが、混乱した頭ではなにも浮かばない。
私は結婚に一度失敗している、原因は妻の浮気である、妻の相手は結婚前の彼氏であり上司である。しかも私が離婚を切り出したのでなく浮気した妻が私をゴミ箱に棄てた。
このままチーフと結婚すれば同じことが起こる、二度と挫折したくない、朴さんに会わなければ、いまも挫折したまま、社会の暗いところで朽ち果てていた。朴さんのおかげでいまがある。もうチーフには遭いたくない。
しかしもう少し真実を調べる必要がある、チーフの男はいったいどこの誰なのだ、少し冷静になってきた。喫茶店から電話帳を借りる。秘密探偵社を探す、自宅から近くのところを探して浮気調査を依頼する。20分ほどして二人やってきた。
冷静に落ち着いた口調で話す「結婚する相手に男が出来た、今日から直ぐに調べてほしい、」
探偵は料金表を見せながら説明を始める、それが終わると「法律的な問題もありますので彼女と婚約している証拠が何かありますか」?
「婚約している証拠はありませんが、マンションの鍵をもっています、私はいま中国に出張中であと一週間は日本に帰らないことになっています。だからこの4~5日が勝負です」
「その鍵を貸していただけませんか」
「エッ、勝手に入ったら住居侵入罪になりますよ」
「分かっています 彼女の部屋に盗聴器をしかけます、法律的な証拠にはなりませんが、あなたが真実を知ることによって分かれる決心がつきます、だから決して私どもが盗聴器を仕掛けたことは永久に黙っていてください」
「彼女が浮気をしていることは100%間違いはありません、私が知りたいのは男の正体です、今日彼女のマンションに行って浮気が判りました、」
「彼女は水商売人ですか」
「違います普通の女性です」
「彼女は今日 男と出かけています、今すぐ行けば効率がいいです。場所と名前をお渡しします。
「分かりました、早速行動に移ります、報告は2~3日後でこの喫茶店でします、連絡は会社にいれます」といってその男女の探偵ペアーは私の前から消えた。
一緒に泊まった男はお父さんではない、昔の彼氏か、新しく彼氏が出来たのか、心が不安で揺れている、男女の嫉妬心ではなく、信じていた彼女に裏切られたショックのほうが大きかった、チーフを誠実で正直な人と今の今まで信じきっていた、最初の妻にも女の魔性を見たが、今回もまた理解できない女の魔性を見てしまった。
急に朴さんに会いたくなった、朴さんも女の魔性を持っているが何故か心を癒してくれる、朴さん専属の大人のおもちゃでいるほうが心が満たされる、このままいると離婚直後に経験した鬱病になってしまいそうである、あの時は一年くらい立ち直れなかった。
朴さんに会わなければ社会の落伍者で一生終わっていたかもしれない、そう思うとすぐにでもソウルに行きたくなった。
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